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糸リフトの糸の種類について──PDOとPCL
「高い糸のほうが、いい糸なんですよね?」――カウンセリングでよく聞かれます。答えはシンプルで、違います。値段の差は品質の差ではなく、素材の差です。
美容医療で使われる吸収性の糸の素材は、大きくPDO・PLLA・PCLの3系統。当院が主に使っているPDOとPCLを中心に、それぞれの性格を説明します。
PDO:外科の縫合糸として実績を積んだ、硬めの素材
PDO(ポリジオキサノン)は、外科手術の縫合糸として何十年も体内で使われてきた素材です。人体での安全性の実績という意味では、最も枯れた素材と言えます。
糸質はやや硬め。だからこそ、入れた直後からしっかり支える力があります。体内ではおよそ6ヶ月〜1年かけて加水分解され、水と二酸化炭素になって吸収されます。跡形も残りません。
向いているのは、はじめての方、まず試したい方、半年〜1年ごとにこまめに整えたい方。当院のPDOコグが1本9,000円からと手に取りやすい価格なのは、素材と構造がシンプルだからで、品質を落としているからではありません。
PCL:しなやかで、長く働く素材
PCL(ポリカプロラクトン)は、3系統の中で最も柔軟性が高く、吸収が遅い素材です。しなやかなので表情の動きになじみやすく、硬い糸で起きがちな引きつれ感が出にくい。吸収まで2〜3年と長いため、物理的な支えとしての期間も、コラーゲン生成を促す刺激の期間も長くなります。
一度でしっかり、長く持たせたい方、過去に糸の引きつれ感が気になった経験のある方には、PCL系(当院ではclass SのPCL、class SSのヴィーナスリフト)をご提案することが多いです。
ちなみにもうひとつの系統のPLLA(ポリ乳酸)は、コラーゲンを作らせる力が強いとされる、やや硬めの素材です。素材ごとに「支える力の立ち上がり」「持続」「肌質への効果」のバランスが違う、という理解で十分です。
どちらが上等、ではなく、どちらが合うか
整理すると、PDOとPCLは上下関係ではなく、性格の違いです。こまめに通って都度整えたいならPDO。頻繁には通えないから一度で長く持たせたいならPCL。ご予算、通える頻度、仕上がりの好みで選ぶものです。
だから当院では、高い糸を無理におすすめすることはありません。カウンセリングでお顔を拝見して、あなたの生活に合う糸だけをご提案します。「どの糸が一番いいですか」ではなく「私の場合はどれですか」と聞いていただくのが、一番いい質問だと思います。
素材のほかに「コグの形状」という軸がある
せっかくなので、もう一段だけ詳しい話を。糸の性能は素材だけでなく、コグ(突起)の作り方でも変わります。初期の糸は、糸本体に切り込みを入れてコグを作っていました。この方式は、切り込んだ分だけ糸本体が細くなるので、強度が落ちる弱点があります。現在の主流は、成型(モールディング)でコグを糸と一体で作る方式で、糸を細らせずに引っかかりを作れます。
当院の4種類で言えば、class BのPDOコグはベーシックな構造のPDO。class AのPDOポッシュコグは、コグの形状を工夫して引き上げ力を高めたPDOです。素材は同じPDOでも、構造の違いで役割が変わります。class SのPCL、class SSのヴィーナスリフトはPCL系で、ヴィーナスリフトはコグの密度と配置でより強い引き上げを狙った糸です。
つまり当院の価格の階段(9,000円〜25,000円)は、「素材の吸収期間」と「コグ構造の引き上げ力」の2軸で決まっていて、品質の等級ではありません。9,000円のPDOコグも、医療機器としての品質基準を満たした糸です。安い糸で試して、気に入ったら長持ちする糸へ。そういう付き合い方ができるように、あえて価格の入口を低くしています。
※糸リフトは自由診療(保険適用外)です。腫れ・内出血・引きつれ感などのダウンタイムがあり、効果の程度・持続には個人差があります。
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