COLUMN

糸リフトのこだわり──そもそも適応のない人にはしない

LOCO CLINIC 院長 狩野遊太

身も蓋もない話をします。糸リフトは万能ではありません。糸では改善しないたるみが、はっきりと存在します。

糸リフト専門のクリニックがこれを書くのは営業的には下手だと思いますが、一番大事な話なので最初に書いておきます。

糸が向かない、代表的な3つのケース

ひとつめは、皮膚そのものが大きく余ってしまっている方。糸は皮下の組織を引き上げる施術なので、伸びきって余った皮膚は残ります。この場合、余剰皮膚を切除できる切開リフトのほうが、希望の変化に届きます。

ふたつめは、たるみの主因が骨や脂肪の「痩せ」にある方。加齢では骨の萎縮と脂肪の減少が同時に進むため、痩せ型の方では「下がった」より「削げた」が老化の主役になります。この場合に糸で引いても変化は乏しく、こけが強調されることさえある。必要なのは引き上げではなく、ヒアルロン酸などで支えを補うことです。

みっつめは、脂肪の下垂が非常に強い方。糸の保持力には物理的な限界があり、重量に対して糸が負けると、早期の後戻りになります。この場合は治療の組み合わせや、切開も含めた選択肢の話をすべきです。

「効かなくはない」が一番よくない

厄介なのは、こうした方に糸リフトをしても「まったくの無意味」にはならないことです。入れれば多少は変わる。だから売ろうと思えば売れてしまう。

でも、8万円払って「多少」だった方は、どう思うでしょうか。「思ったほど変わらなかった」という記憶は、その方の中で糸リフトそのものへの失望になり、美容医療への不信になります。結果が見えているのに施術をするのは、僕は診療だと思いません。

「不要です」と言えるクリニックでありたい

当院のカウンセリングでは、糸リフトが向かないと判断した場合、そのままお伝えします。切開リフトなど当院で扱っていない治療が向いているなら、当院ではできなくても、その選択肢があることをお話しします。

せっかく来ていただいたのに何も売らない日があるのは、経営としては下手なのかもしれません。でも、カウンセリングの目的は施術を売ることではなく、その方が正しい選択をできる材料を渡すことです。正直に「不要です」と言われた経験は、信頼として残ると信じていますし、実際、そうやって信頼してくださった方が後日、別のお悩みで戻ってきてくださることがあります。

当院が糸リフト専門を名乗る以上、糸リフトを「しない」判断にも専門性を持ちたいのです。

では、糸リフトが「効く」のはどんな人か

断る話ばかり書いたので、適応がある方の像も書いておきます。典型的なのは、30代後半〜50代で、頬やフェイスラインの下垂が出始めているけれど、皮膚の余りはまだ大きくなく、顔のボリュームもある程度保たれている方。この条件が揃っている方は、糸リフトの変化が素直に出ます。ほうれい線の上に頬の脂肪が乗り始めた、フェイスラインがもたついてきた、マスクを外した輪郭が気になる――このあたりの訴えは、糸の得意分野です。

診断の実際も少しだけ。たるみは横になると重力で消えるので、カウンセリングでは必ず座った状態のお顔で診ます。頬を斜め上に持ち上げて、輪郭がどう変わるか。持ち上げたときの変化が大きい方ほど、糸で再現できる余地が大きい。逆に、持ち上げてもあまり変わらない方は、下垂ではなくボリュームの問題が主役です。ご自宅の鏡でも試せるので、やってみてください。

HIFU(超音波でSMASに熱を入れて引き締める治療)や注入との役割分担を聞かれることも多いので一言で言うと、軽い予防〜引き締めはHIFU、下垂した組織の位置を戻すのは糸、失われた支えを補うのは注入、皮膚の余剰を取るのは切開。守備範囲が違う道具です。あなたの主役がどれかを見立てるのが、カウンセリングの最初の仕事になります。

※糸リフトは自由診療(保険適用外)です。腫れ・内出血・引きつれ感などのダウンタイムがあり、効果の程度・持続には個人差があります。