COLUMN

糸リフトを長持ちさせる要素とは

LOCO CLINIC 院長 狩野遊太

「糸リフトってどのくらい持ちますか?」は、カウンセリングで一番多い質問です。目安としてはPDO素材で6ヶ月〜1年、PCL素材で2〜3年とお答えしていますが、実際には同じ糸を入れても持ちに差が出ます。

何がその差を作るのか。施術側の要素と、受ける側の要素に分けて、正直に並べてみます。

施術側の要素①:素材と「溶けたあとに残るもの」

まず糸の素材です。PDOはおよそ6ヶ月〜1年、PCLは2〜3年かけて体内で分解・吸収されます。吸収が遅い糸ほど、物理的な支えとして働く期間が長い。ここまでは単純な話です。

もうひとつ大事なのが、糸が溶けたあとに残るものです。糸の周囲では、異物への反応としてコラーゲンの生成が促されます。糸という芯がなくなったあとも、育ったコラーゲンの柱が組織に残り、ハリと支えとして働き続ける。PCLのように長く体内に留まる素材は、このコラーゲンを作らせる刺激も長く続きます。糸リフトを繰り返している方の肌が安定してくるのは、この積み重ねによるところが大きいです。

施術側の要素②:設計と本数

同じ素材でも、設計で持ちは変わります。たるみの原因になっている脂肪の区画を正しく捉え、適切な支点から適切な方向に引けていれば、糸1本あたりの負担が分散して、引き上げが保たれやすい。逆に、重さに対して本数が足りなかったり、方向がずれていたりすると、特定の糸に負荷が集中して早く後戻りします。

「本数は多いほどいい」わけではありませんが、「少なすぎる糸で無理に引く」のも持ちを削ります。お顔を拝見して、必要十分な本数をご提案するのはこのためです。

受ける側の要素:体重と、最初の数週間

受けたあとの要素で一番大きいのは、急激な体重変動です。短期間で大きく太れば、引き上げた組織そのものが重くなり、支えとのバランスが崩れます。大きく痩せれば、今度はボリュームが失われて、たるみの見え方自体が変わります。糸リフトを長持ちさせたいなら、体重は緩やかに保つのが一番効きます。

術後の初期も大事です。糸が組織になじむまでの数週間は、大きく口を開ける、強いフェイスマッサージ、長時間のサウナといった、糸に負担をかける行動を控えていただきます。逆に言えば、その期間を過ぎたら特別なことをし続ける必要はありません。紫外線対策と保湿というごく普通のスキンケアは、育ったコラーゲンを守る意味で無駄になりませんが、基本は普通に暮らしていただいて大丈夫です。

そして、気になってきたら早めのメンテナンス。完全に戻り切ってから入れ直すより、支えが残っているうちに足すほうが、少ない本数で状態を保てます。

「持ち」という言葉の中身を分解する

最後に、少しマニアックですが大事な話を。「持ち=糸が溶けるまでの期間」と思われがちですが、正確には3つの期間が重なっています。①糸が物理的に支えている期間(PDOで6ヶ月〜1年、PCLで2〜3年)。②糸の周囲に作られたコラーゲンが支えている期間(糸の吸収後もしばらく続く)。③見た目の満足が続く期間(①+②から、その間に進む老化を差し引いたもの)。

つまり、糸が溶けた瞬間に顔が元に戻るわけではありません。一方で、糸が残っていても老化は進むので、「入れた日の顔がそのまま2年続く」わけでもない。誠実に言えば、糸リフトは時間を巻き戻す施術ではなく、下がる速度に抗いながら、位置を定期的に立て直す施術です。

この理解に立つと、メンテナンスの設計が合理的になります。PDOなら半年〜1年ごとに軽く足す。PCLなら1年半〜2年を目安に状態を見る。毎回大掛かりにやり直すのではなく、残っている支えの上に薄く積んでいく。長く通ってくださっている方ほど1回あたりの本数が減っていくのは、この積み重ねが効いているからです。

なお、コラーゲンを育てて守るという意味では、紫外線対策と禁煙は地味に効きます。紫外線と喫煙はどちらもコラーゲンを壊す方向に働くことが分かっているからです。糸リフトの持ちの話は、最後は肌の健康の話につながります。

※糸リフトは自由診療(保険適用外)です。腫れ・内出血・引きつれ感などのダウンタイムがあり、効果の程度・持続には個人差があります。